2017年6月7日水曜日

空飛ぶじゅうたんに乗って

 ゆうべこんな楽しい夢を観た。
空飛ぶバイクや空飛ぶ自動車を作っている工場へ行って、
「空飛ぶじゅうたんを作ってくれないか」と頼んだら、
「いいよ、作ってあげよう」といってくれた。
値段が高いので、ローンを組んで買うことにした。
 3ヶ月ほどで出来た。じゅうたんの下にプロペラが6つ付いていて、コンピユーター制御で動く。さっそく乗ってみた。
行先を登録してボタンを押すと、プロペラが勢いよく回転し、ふんわりと空中に浮かんだ。それからグーンと上昇した。
「いやあ、すごい。すべて完全自動運転だ」
飛びながら周囲を見下ろすと、道路やビル、マンション、アパート、デパート、公園、橋などがよく見える。
低空飛行で国道の上を飛んでいると、ケンタッキーフライドチキンのお店があったので、着陸場所をこのお店に変更して着地した。6ピースポテトパックとコーラを買ってまたじゅうたんに乗り上昇した。
「山のてっぺんに行って食べようかな」
着陸場所を山に変更して山へ向かった。
 ときどき前方から、空飛ぶバイクや空飛ぶ自動車が飛んできた。みんな今からデパートやスーパーへ買い物に行くのだ。
空飛ぶじゅうたんは珍しいので、みんなじろじろとこっちを観てる。
 町を過ぎてから、田んぼ道の上を飛びながら山へ向かった。
 山には、木の実がたくさんなっていたので、もぎ取って山の上で食べることにした。
やがて頂上が見えて来た。着地して下を見降ろした。
「いやあ、爽快な眺めだ」
感動しながら、食事をはじめた。
 そのとき後ろの林の中の草がごそごそと動いた。
 草から出てきたのは、手のひらくらいの大きさの人間そっくりな小人だった。
「やあ、小人くんを見るのははじめてだ。どうだい、いっしょに食べないか」
「ありがとう。じゃあ、いただくよ」
 食事をしながら、小人くんからいろんな話を聞いた。小人くんの話によると、この山の洞窟の中に小人の国があるので来てみないかということだった。
 小人の国は、科学技術が非常に進んでいて、住民の半分は人口知能ロボットだそうだ。この小人くんの奥さんもロボットだといった。
 食事が終ってから、さっそく小人くんに案内されて洞窟の中へ入って行った。あまり広くない洞窟なので、頭をぶつけないように歩いて行った。洞窟は先へ行くほど狭くなっていたので、四つん這いで進んで行った。
 しばらく行くと、真っ暗だった洞窟の奥が少しずつ明るくなってきた。窮屈で身体が岩に挟まりそうになりながらさらに進むと、洞窟の外が見えてきた。
 カメが甲羅から頭を出すように外を覗き込んでみた。
「うわ、すごいー、未来都市だ!」
 子どもの頃に観たテレビアニメのような街が広がっているのだ。雲を突き抜けているものすごく高いビル、目には見えない透明な道路を走るたくさんの空飛ぶ自動車。大規模なコンサート・ホール、オペラ劇場、広大な敷地の公園の中には500メートル以上も吹き上がる巨大な噴水など壮観だ。
「あなたが住んでいる巨人国とはぜんぜん違う街でしょう」
「うん、いままで観たことがない街だ」
 小人くんに話を聞くと、この山の中にはこの街以外にもたくさんの街があるそうで、全部トンネルでつながっているそうだ。
 小人くんは、ほかにも信じられないようなことをいろいろ教えてくれた。
 先ず、この小人の国の住民の平均寿命は200歳で、中には300歳くらいの人もいる。結婚はたいへん自由で、何歳で結婚しても誰からも文句をいわれない。
 人口知能ロボットと結婚する人も多く、100歳の男性が20歳の女性と結婚する人もいるし、反対に100歳の女性が20歳の男性と結婚することもある。ほとんどの人は平気で手をつないで歩いているけど、人目を気にする人も中にはいるようで、そんな人たちは、イスラムの女性が外出するときに身につける目だけ出してるチャードルみたいな服を着ている。色は黒ではなく、みんな明るいカラフルな色だ。
 生活費は国から全額支給されるので経済的にも困らない。余暇の設備も実に充実している。医療は人口知能ロボットのお医者さんに診てもらうので、すぐに病気を見つけてすぐに治療してくれる。医療費も無料だそうだ。
 子どもたちの教育は自宅でネットで学ぶ。先生は人工知能ロボットで、教え方もたいへん上手い。ネットで友だち申請すると1ヶ月で100~200人くらい出来る。お互いにモニター画面を観ながら、趣味の話や遊びの話をする。一日のほとんどの時間は自宅にいるそうで、気の合った友だちが出来ると、打ち合わせをしてから空飛ぶ自転車に乗って遊びに行くそうだ。
 生活のほとんどのことは人口知能ロボットがやってくれるので便利だといっている。でも、感性や感覚を扱う能力は人間の方がはるかに優れているので、芸能、音楽、美術、映画など、創造性を発揮する仕事は人間が担当している。
 料理もロボットがするが、やっぱり人間が作った料理店の方が流行っているとのことだ。ロボットの作る料理もおいしいが、電気しか食べていないので、本当のおいしい料理の味は出せないといっている。
 政治と法律についても凄いと思った。この小人の国には人間の政治家と法律家、そして人口知能ロボットの政治家と法律家が半分づついて仕事をしている。コンピュータが常に政治と法律を監視しているので、汚職もなければ税金の無駄遣いをするものもいない。住民はすべて同じ階層で平等に暮らしているから富裕層(特権階級)なども存在しない。裁判所も間違った判決を下すこともない。
 いま世界中の巨人国で深刻な問題になっている格差社会も、この小人の国にはまったく存在しないのである。
 あと一つ素晴らしいと思ったのは、この国の住民たちの生き方で、ひとりひとりが自分のペ-スで生きてることだ。巨人国のように「みんな一緒で」のような全体主義的な生き方がなく、ひとりひとりが自分だけの人生を楽しみながら送ることができるのだ。
「私が住んでる巨人国も、将来はこんな街になっていたらいいなあ」
 そう思いながら洞窟から出ることにした。小人の国の街は外からしか観察出来なかったけど、それでもおおいに満足して洞窟から出た。洞窟から出るのにずいぶん苦労したけど、外に出てから小人くんが空飛ぶじゅうたんに乗ってみたいといったので、1時間ほど近くを飛んで別れた。
 家に帰ろうと思ったとき、山で雷が鳴りだした。急いでじゅうたんに乗って飛んで行ったが、途中で稲妻がじゅうたんに命中して、真っ逆さまに地面に向かって落ちて行った。もうだめだと思って目を閉じたとき、ごつんという音で目が覚めた。目を開けてみると自分の部屋のベットの下だった。みんな夢だったのだ。
「ああ、だけどいい夢だったなあ。でも早くあんな素晴らしい未来世界がやって来たらいいなあ。いまのような安月給の暮らしじゃ、この先心配でやっていけないから」
 外では、夢の中と同じように雷が鳴り激しく雨が降っていた。









(未発表童話です)




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